腰痛に対する牽引療法は効果があるか?

院長の橋本です。現在ではEBM(Evidence Based Medicine;根拠 エビデンスに基づく医療)とそれをまとめた診療ガイドラインを参照し、「より良い医療」を考えることが医師としての治療原則となっています。その概念は私の専門である肩関節外科のパイオニアであるEA Codman先生が提唱し、先生の著書「The Shoulder」(何と1914年出版)に記載している「End Result Idea」が始まりのようです(難解な英文の復刻版を持っていますが、手書きの病理組織など挿絵がとても素晴らしいです。日本における肩関節外科のパイオニアであり、尊敬してやまない師匠の信原克哉先生は原著を持っておられました)。

私が整形外科医になったころ、腰を牽引している患者様を外来でも入院でも見て、本当に効果があるのか(ない!)いつも疑問に思っていました。2019年に改訂された「腰痛診療ガイドライン」の「腰痛の治療として物理・装具療法は有用か」のなかで「牽引療法」は推奨度2(行うことを弱く推奨する)、エビデンスの強さC(効果の推定値に対する確信は限定的である)です。ガイドラインが示す通り牽引で腰痛が治るという考えに私は全く同意できず、当然当院には牽引装置は設置していません。

https://minds.jcqhc.or.jp/s/guidance_nakayama_bc_2018
https://www.ajha.or.jp/voice/arikata/2011/07.html
https://en.wikipedia.org/wiki/Ernest_Amory_Codman

https://www.joa.or.jp/member/committee/guideline/files/guideline/lumbago_2019/lumbago_2019_b1.pdf#page=39

 

 

2022年03月30日