骨粗しょう症
骨粗しょう症とは骨がスカスカになって骨折しやすくなる病気です。高齢化率の上昇に伴って骨粗しょう症の患者数は増加傾向にあります。骨粗しょう症は圧倒的に女性、特に閉経後の女性に多くみられ、女性ホルモンの減少や老化と関わりが深いと考えられています。腰や背中に痛みが生じて、活動性の低下や足腰の筋力の低下が起こります。また背中が丸くなったり身長が縮んだりします。そして転んだはずみで容易に骨折を起こし、寝たきりや要介護の原因となります。
骨折が生じやすい部位は、せぼね(脊椎の圧迫骨折)、手首の骨(橈骨遠位端骨折)、太ももの付け根の骨(大腿骨頚部骨折)、腕の付け根の骨(上腕骨近位端骨折)などです。最近の研究によると膝の変形症なども骨粗しょう症と関係があることが指摘されています。骨粗しょう症が原因で一度圧迫骨折が生じると適切な治療をしなければ、骨折連鎖と言って、次々と他の部位にも圧迫骨折が生じる危険性が高くなります。
骨粗しょう症による骨折

骨粗しょう症はなぜ女性に多いか?

骨は一度作られたら一生変化しないように見えますが、何歳になっても骨に存在する破骨細胞が古い骨を壊し(骨吸収)、骨芽細胞が新しい骨を作る(骨形成)という骨代謝が常に繰り返されて新しい骨に生まれ変わっています(骨のリモデリング)。1年間でおよそ20%の骨がリモデリングされていると言われています。ところが、破骨細胞(骨吸収)の働きを正常に保つのに最も重要な働きをする女性ホルモンが減少する閉経期以後になると、この骨吸収と骨形成の働きのバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回り、骨粗しょう症になります。その結果、骨が脆くなり「いつのまにか骨折」などの脊椎の圧迫骨折などが起こりやすくなります。これが女性に骨粗しょう症が多い理由です。

骨粗しょう症の検査

骨粗しょう症は背骨のレントゲン、骨密度検査、血液検査などで診断します。レントゲン検査で脊椎の圧迫骨折がないかを調べます。次に骨密度検査を行います。骨密度とは骨の強さを示す指標です。当院には腰椎と大腿骨を正確に測定可能な最新の骨密度測定装置(DXA法)を設置しています。CT検査などと違って放射線被曝はほとんどありません。手や踵のレントゲンを使った簡易的な検査では正確な骨密度の測定はできません。検査の結果、骨密度が若年成人の70%未満になると骨粗しょう症と診断され、治療が必要となります。骨密度が低い場合、血液検査で骨吸収(破骨細胞)の指標である TRACP-5b、骨形成(骨芽細胞)の指標であるP1NPという骨代謝マーカーの数値を調べ、治療方針を決めます。また食事からカルシウムを吸収するのに必要なビタミンD不足(血中25(OH)D低値)が高齢者の骨折危険因子として注目されており、これも血液検査でわかります。
骨密度測定器

骨粗しょう症の治療

レントゲン検査、骨密度検査、血液検査などの結果、骨粗しょう症と診断した場合、患者様の年齢や体力、圧迫骨折の既往、糖尿病やステロイドの服用の有無なども参考にして治療がすぐに必要か、またどのような治療をするかを医師が正確に決めて、ご説明し、同意を得た上で治療を開始します。
骨粗しょう症のお薬による治療には大きく分けて、
(1)骨の吸収を抑える薬(SERMやビスホスホネートなどの内服や注射薬)
(2)弱った骨の吸収と形成の機能を活発にし、結果として骨を強くする(副甲状腺ホルモン薬の皮下注射薬)
(3)ビタミンDなどのカルシウムの取り込みを助ける薬(内服薬)
に分けることができます。
(1)の治療が比較的便利なため、現在では骨粗しょう症の治療に整形外科以外でも多く処方されていますが、注意しなければならないのは長く服用すると、骨の吸収、形成の働きが止まってしまい、古い骨が蓄積し、通常骨折しないような部位の骨折(非定型骨折と言います)が起こることがあり、休薬期間が必要です。また歯の治療ができないことや顎骨壊死(歯茎の骨が吸収されること)の危険性も指摘されています。いまだに多くの問題点がある薬ですが、最も困るのは、長期間この薬による治療歴があると、(2)の副甲状腺ホルモン薬による治療の効果がかなり減弱することです。骨密度をあげるのに最も効果があるのは(2)の自己注射による治療です。お腹などの皮下に打つので痛みはほとんどなく、初めての時は注射の仕方なども十分に指導します。
足腰の筋力の低下がある場合は、薬による治療と並行して運動器リハビリテーションで筋力アップとバランス訓練を行うことがとても大切です。筋力が上がり、筋肉が増えると骨密度が増加することは内外の研究で証明されています。当院で行っているTRXを用いたバランス訓練は転倒予防に効果があります。

骨粗しょう症が原因で寝たきりや要介護状態にならないために

骨密度が低下すると下肢の筋力が低下し、転倒の危険性が増加します。健康寿命を延ばし、寝たきりなどにならず、元気で充実した生活をおくるために定期的に骨密度検査を行い、必要であれば骨粗しょう症の治療とリハビリで足腰の筋力を維持することが大切です。65歳を過ぎたら、特に女性の方は骨密度測定をお勧めします。

骨粗しょう症の疑い・セルフチェックリスト

□女性で65歳を過ぎている
□閉経になっている(早期閉経、子宮・卵巣などの手術歴)
□最近身長が低くなった(25歳頃の身長に比して4cm以上の低下)
□最近背中が曲がってきた
□背中の骨が潰れていると言われたことがある
□腕の付け根、手首、足の付け根を骨折したことがある
□母や祖母に骨粗しょう症の人がいる(親が大腿骨頸部骨折の既往あり)
□若い頃運動をあまりしなかった
□BMI低値、偏食、喫煙、過度のアルコール摂取、糖尿病、関節リウマチ