サイレントマニピュレーション

サイレントマニピュレーションとは

サイレントマニピュレーションとは、肩の痛み(肩関節周囲炎・五十肩)に対して行われる治療です(保険適応)。
五十肩は何らかの原因(原因がない場合もあります)で肩関節の動きがわるくなり、動かすと痛かったり、夜間痛みのために眠れなくなったりする症状です。リハビリをしても症状が良くなるまでに2~3年かかることもあり、半数の人は症状が残るとの報告もあります。
原因は肩関節を包む関節包という組織が厚くなり、縮むためといわれています。その肩関節包を内視鏡で切って動くようにする手術があり、私も長くそのような手術をしてきました。しかしながらこの手術をするには入院の上、全身麻酔をしなければなりません。
そこで、当院では外来で治療ができる「サイレントマニピュレーション」を導入しております。
サイレントマニピュレーション

治療の適応

適応とされる方

肩関節の動く範囲の制限が強く、夜間痛などがあり、保存療法で効果が見られない方

適応とされない方

  • 80歳以上の女性の方
  • 骨粗しょう症で骨折の既往がある方
  • 局所麻酔剤にアレルギーのある方
  • 慢性の呼吸器疾患がある方

治療の流れ

麻酔
超音波エコー下に安全に肩関節周囲の痛みをとる伝達麻酔を行います(もちろん全身麻酔ではありません)。
15分ほどベッドに前かがみで座って待っていただくと肩関節周囲から肘にかけて麻酔が効いてきます。人によっては注射した腕全体の位置感覚が一時なくなる方もいますが心配はいりません。
サイレント・マニピュレーション施術
痛みが消失した状態で医師が肩関節を動かし縮んだ関節包を広げ、関節の動きを改善します(サイレント・マニピュレーション、非観血的関節授動術として保険適応です)。この間、痛みはほとんどありません。
施術終了
施術後はすぐに帰宅できます。まれに麻酔がよく効いて肩から腕にかけて力が全く入らない方もいますが、数時間のうちに麻酔は切れます。この場合は三角巾で腕を吊って帰っていただく場合もあります。帰宅後に痛みが強くならないように施行後に肩関節内に痛み止めの注射をします。

留意すべきこと

運動療法に取り組みやすくすることが目的であり、マニピュレーション施行後はリハビリを継続して行うことが重要です。

副作用と対策

感染

非常にまれですがマニピュレーション施行の前に行う麻酔の注射によって菌などが侵入することがあります。
感染症を起こさないように器具の徹底した消毒を行い、医師が滅菌手袋をつけて行います。

脱臼・骨折

非常に稀ですが、動きが硬くなった肩関節を動かすために上腕骨骨折や肩関節脱臼を起こす可能性があります。ただし、過去に発生した方はいません。高齢の女性や骨粗しょう症が高度の方に起こることがほとんどのため、施行前に危険性がないかを医師が判断します。

ふらつきや血圧低下、呼吸苦

局所麻酔剤を使用するためにまれにふらつきや血圧低下、呼吸苦などの症状が出現する場合もあります。状況により点滴を行いしばらくベッドで休んでいただくこともあります。

治療にかかる所要時間

一回の治療所要時間 1.5〜2時間前後
施行前の診察と準備 20分ほど
麻酔処置 15〜20分
麻酔が効くまで座って安静 15分ほど
マニピュレーション施行 15〜20分ほど 
超音波エコーで確認後、関節内に注射 10〜15分
※時間に余裕をもって行うために施行予約日・予約時間を決めて行う場合もあります。

治療期間

術後のリハビリと定期的な診察など1-2ヶ月程度の通院が必要です。