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明けましておめでとうございます。

昨年(令和5年)は当クリニックに多くの患者様が来ていただき有り難うございました。振り返りますと、1月にホームページを新しく刷新し、1月下旬には電子カルテと連動させたキャッシュレス決済を導入、現金による自動精算機支払いに加えて、患者様の利便性を上げることができました。リハ室に設置したTRX(個人的に開院前から自重トレに使っていました)のエキスパート研修に現在でもバスケットボール現役の当院理学療法士に参加してもらい、患者様の転倒予防・体幹筋強化などに積極的に活用しております。AEDをリハ室に設置しましたが、幸い現在まで使用機会がなく、リハ前後の体調管理・評価を十分にしてくれているスタッフのおかげと感謝しております。
8月に開院2周年記念講演会を行い、市民の皆様に最近の整形外科外来での治療がいかに進んでいるかを私なりの考えでお話しさせていただきました。
8月の盆前にクリニックの雨漏りが院長室の天井から発生し、1ヶ月ほど不便な時期を過ごしました。最も辛かったことは愛用のMacが運悪く水浸しになり、使用不可になったことです。幸いTime Machineでバックアップをとっていたのでデータは助かりましたが。
10月初旬からはインフルエンザワクチン及びXBB1.5コロナワクチンの接種を開始しました。10月上旬には毎年のことですが、第50回日本肩関節学会学術集会が東京で開催され、今回は当院のPTを全員連れて参加しました。医療事務スタッフ3名も私の友人の整形外科クリニックに医療事務の見学・研修に行ってくれました。その後当院の医療事務のスキルがアップし、診療により専念できるようになりとても助かっております。

12月下旬からは電話による予約に加えて、新たにWebサイトからの『初診』予約受付を開始しました。

本年は私を含め、個々のスタッフが真摯に業務に向き合い、患者様の治療満足度に良い変化と更なる好転の芽が出てくる年であることを願っております。そのためにも日々進化している整形外科治療を理解し、最新の知識・技術を得ることを心がけ、クリニックの治療レベルを上げ、患者様の治療にあたることが大事です。私も勤務医・大学院時代、整形外科医として肩関節疾患の原因解明と治療を極めることを志して以来、力ある恩師たちの指導のもとに肩のみならず多くの手術の執刀を経験し、学位研究(病理)および臨床研究の結果を可能な限り学会発表や論文投稿をしてきました。そして思い立てば国内だけではなく海外へも修行?(手術の研修)に何度も何箇所も行きました。そのおかげで今でも玉石混合の中で正しい整形外科治療を見極める目と、治療に対する考え方が少しずつできてきたと思っております。このような自分の経験から、本年も業務に支障がない範囲で研修を積んでもらうつもりです。意欲を持って目を輝かしてくれるスタッフを育てていくのが院長としての私の責務の一つであり、彼らがクリニックにとって掛け替えのない宝になり、それが患者様の痛みの改善につながっていく医療になればと思っております。
本年も引き続き「はしもと整形外科クリニック」を何卒よろしくお願い申し上げます。

令和6年 元旦
はしもと整形外科クリニック
院長 橋本 卓

2024年01月01日
第50回日本肩関節学会学術集会に参加して

令和5年10月13日から2日間、東京で第50回日本肩関節学会学術集会が開催され、例年同様参加してきました。

肩に関する疾患の病態・治療解明を進歩・普及させることを目的とした学会で、恩師の故信原克哉先生らが発起人となって創設された「日本肩関節研究会」を母体として、「一般社団法人日本肩関節学会」に発展、さらにPTらが主体の「日本肩の運動機能研究会」と合同で学術集会を開催するまでになり、今回が50回目の節目に当たります。日々進化している肩疾患の治療で、現在までの成果と何が問題なのかを2日間にわたって熱く議論をします(信原病院在職中のころの学術集会は斬新なアイデアが飛び交い、もっと熱かったのですが)。今回も法人組織の代議員として学会前日の社員総会・会長招宴に出席、学会開催中は講演の座長や会場での発言もいくつかさせていただき、新しい知識を得られ、とても勉強になり充実した学会でした。ただ一時期そうであったように一部のセッションで発表内容が技術と成績の自慢の場になっているようなところが見受けられ、今後の学会の進むべき方向に一抹の不安を感じたのも正直な感想でした。

今回は当院のPT全員を連れていきました。肩腱板断裂、反転型人工肩関節(RSA)、50肩(学術用語としては凍結肩)、プロ野球選手の肩投球障害、胸郭出口症候群(TOS)などに対する治療の進歩や最新の動向などの発表や肩関節外科医たちによるディスカッションなどを聴講し、また同世代のPTたちの多くの研究発表、全員懇親会でお酒を飲みながらの学会員同士のフランクな意見交換なども体験してもらいました。当院のPTたちにとっては何もかもが初めての経験だったようで(うち2名は2回目の参加)、肩疾患の治療に対するモチベーションがかなり上がったようです(学会後の研修報告を見て)。この経験と得た知識を今後患者様に還元してくれるであろうことを考えると連れて行って本当に良かったと思っています。

 

2024年01月01日
開院2周年 記念講演会を開催しました

令和5年8月5日に はしもと整形外科クリニック「開院2周年記念講演会」を開催しました。コロナが収束に向かっているとはいえ、終息していない状況の中、参加していただいた皆様には厚く御礼申し上げます。今回は「しびれ・痛みに対する整形外科治療の進歩」と題して講演をさせていただきました。ここ5年ほどで整形外科外来での治療が格段に進歩してきていることを中心にお話ししました。「原因を根本から治していく治療」が一段と進んできており、患者様のつらい症状を少しでも和らげていけるように頑張っていく所存です。クラシックコンサートも行いましたが、ヴァイオリンとピアノの生演奏はとても心地よい響でした。

 

 

 

2023年09月23日
第49回日本肩関節学会に出席してきました

10月に横浜で開催された第49回日本肩関節学会に出席してきました。学会の代議員を拝命しており、学会前日の社員総会に出席しました(しなくてはなりませんでした)。社団法人となったこと、学会をさらに大きくするために(?)、今年は19名と今までにない大人数の代議員が新たに選挙で選ばれました。総会の後、会長招宴があり、久しぶりに肩の仲間とリアルにお酒が飲めました(嬉)。翌日の学会初日に依頼された座長を務めました。肩の夜間痛のこと、腱板を修復してもインナーマッスルが回復しない、脂肪変性(浸潤)も不変など、ちょっと悲しくなる演題発表もありました。一番嬉しかったことは肩学会に初めて参加したスタッフが学んだことをすぐに当院の患者様の治療に還元してくれたことです。連れて行って良かった。

 

2022年10月12日
運動器SHOCK WAVE研究会に参加しました

9月に東京で開催された第4回運動器SHOCK WAVE研究会学術集会に参加してきました。体外衝撃波治療の整形外科に特化した研究会です。適応疾患や最適なエネルギーの量など、まだまだ議論の余地がありますが、重篤な副作用などもなく、とても期待できる治療であることを再確認できました。学術集会終了後に試験があり、合格したので、「施術者?」認定証 なるものを戴きました。患者様の痛みの軽減、組織の再生を願って今後も集束型体外衝撃波を治療に使って行きたいと思っております。

2022年10月12日
コロナワクチン接種―筋肉注射について

 本邦ではインフルエンザを含む多くのワクチン接種が筋肉注射(筋注)ではなく皮下注射(皮下注)ですが、海外のほとんどの国ではワクチン接種は筋注です。インフルエンザワクチンやB型肝炎ワクチンの発症予防や抗体産生に関して筋注の方がより効果があり、注射の痛みや副作用も皮下注よりはるかに少ないことが多くの文献で報告されています。
 それにも関わらず、本邦でワクチンの筋注が避けられてきた理由として、1973年に全国紙で報じられた「幼児大腿四頭筋短縮症(拘縮症)」の原因が大腿部前面への筋注であったことが社会問題となった時代背景があります。ワクチンではなく使用した解熱剤や抗生物質が筋の線維化の原因であったのですが、筋注それ自体が問題であるという考え方が広まり、ワクチン接種に対しても筋注に慎重になってきた歴史があります。2021年2月に日本でコロナワクチンの接種が開始され、今回の接種が4回目となります。当院でも7月26日(火)より新型コロナワクチンの4回目接種(ファイザー社:12歳以上)を開始します。新型コロナワクチンは海外での開発であり、治験も筋注で行われており、日本国内の接種であっても筋注で実施する必要があり、ワクチンを接種する我々医療者は正しい筋肉注射の手技を行う義務があります。
 看護師さんはワクチンの注射を行う部位が肩関節の一番外側で皮下に触れる肩峰という骨から3横指下(約5cm)であることを教えられてきています。しかしながら皮下注ではあまり問題とならなかったこの部位が筋注ではとても危険な部位であることを整形外科医であり、特に肩関節を専門とする私にとって手術を行うたびに痛感させられてきました。
 コロナワクチンの筋注は通常、三角筋という肩の筋肉内に打つのですが、深層には腋窩神経と肩関節を構成する三角筋下(肩峰下)滑液包という大事な組織があります。三角筋を支配する腋窩神経は肩関節や上腕骨近位端骨折の手術で最初に気をつける部位です。肩関節が内旋すると腋窩神経の中枢部が注射の部位になり、橈骨神経も腋窩神経に近くなり、さらに危険です。ワクチン注射後に肩が上がりにくい患者様を見ますが、単なる注射後の痛みであれば徐々に軽快しますが、腋窩神経の末梢部位での損傷であれば前方の三角筋麻痺のみが起こり、完全麻痺とはならないので見逃されることもあります。また肩の外旋が強すぎると結節間溝という肩関節内に繋がる組織に直接刺す危険性があり、上肢の肢位に細心の注意を払わなければなりません。
 肩峰下近位での筋注、あるいは肩関節が外転していると針が上肢外側に対して上方を向いて刺入することになり三角筋下滑液包内へのワクチンの誤注入のリスクが高くなります。インフルエンザワクチンなどの注射後に強い肩峰下滑液包炎が起こることが多く報告されてきており、2010年にはすでにSIRVA(Shoulder Injury Related to Vaccine Administration;ワクチン接種に関連した肩の障害) との名称が提唱され、肩関節外科医の間では周知の疾患となっています。手術による肩峰下滑液包の郭清が必要になることもあります。大学の後輩で、産業医大若松病院整形外科の内田教授が2012年に近医で子宮頸がんワクチンである Cervarix を三角筋部に注射後、数時間で重篤な肩峰下滑液包炎が発症し紹介来院、手術に至った症例を報告しています。裁判記録によると発症原因は不適切な部位への注射であったようです。橈骨神経は上腕骨骨幹部骨折のプレート固定などの手術で最大の注意を払う神経です。注射による橈骨神経障害は腋窩神経とは比較にならないほど重篤かつ麻痺などの後遺症が残ることがあり、最も気をつけなければならない神経です。
 外来診療で使用している整形外科に特化した超音波エコーを用いると橈骨神経の走行を明瞭に確認することができ、また後上腕回旋動脈に沿って走行する腋窩神経の部位も容易に確認できます。正しく安全なワクチン接種を行っていきたいと思っております。

1)馬嶋健一郎ほか インフルエンザワクチンにおける皮下注射・筋肉注射の差異―発症率・接種時疼痛・副反応の前向きコホート観察研究― 環境感染誌 2021; 36: 44-52.
2)Uchida S, et al. Subacromial bursitis following human papilloma virus vaccine misinjection. Vaccine 2012; 31:27-30.
3) Bass JR, et al. Shoulder injury related to vaccine administration (SIRVA) after COVID-19 vaccination. Vaccine 2022 Jun 8


2022年07月20日
論文掲載

昨年10月に名古屋で開催された第48回日本肩関節学会で発表した内容のProceedingが雑誌「肩関節」に掲載許可となりました。これで86本目の主著論文となりますが、まだまだ恩師信原先生の域には到底及んでおりません。先生は開業後も立ち止まることなく、国内外の講演は言うまでもなく、精力的に有名な「肩の教科書」に加え、肩に関する数えきれない論文や明智光秀の書籍など多くの業績を残されました。もちろん患者様の診療が一番優先することですが、今後も日々の診療で得られる新しい知見などがあれば学会発表や論文を書いていきたいと思います。

  

2022年07月10日
肩の治療実績(2021)

読売新聞6月15日の紙面に全国の主な医療機関(日本肩関節学会会員の医師が在籍)の肩の治療実績(2021)が掲載されました。当クリニックも載っております。これも肩の痛みに困って来院していただいた多くの患者様のおかげです。有難うございました。これからも正確な診断と的確な治療を行なってまいりたいと思っております。

2022年07月06日
開院1周年

今月の6月17日で開院後1年となりました。本当にあっという間で勤務医から開業医になり、院長兼事務長?の仕事も大変でしたが、勤務医では知りようがなかった保険医療に関する多くのことを知り、また一人一人の患者様の症状から改めて多くのことを学べ、とても充実した1年でした。共に頑張ってくれたスタッフ皆んなに感謝、有難う。もちろん一番は当院に御来院いただいた患者様のおかげで迎えることができた1年です。今後もロードバイクで走り回った大好きな糸島で痛みを抱えておられる患者様に寄り添い、私の持てる力と今までの経験、そして集束型体外衝撃波など最新の医療機器を駆使して地域医療を全うしていきたいと思っております。写真はお世話になった大事な方からいただいたケーキとお花です。私が一番大好きなイチゴケーキでした(スタッフ全員で食べました)。PS:日差しが強いリハ室のロールスクリーンを私が好きなネイビーブルーにしました(嬉)。

2022年06月29日
恩師信原先生と

医師として私には大切な5人の恩師(師匠)がいます。鈴木先生、笹栗先生、松元先生、Snyder先生、そして信原先生です。信原先生のご指導のもと、書かせていただいた主著論文は数えたら50を超えていました。10年以上にわたり、信原病院で肩関節外科医としての私を作っていただき本当に有難うございました。先生の外来でBeschreiberをしているときが一番勉強になりました。大学を含め、どこに行っても匙を投げられ、最後の砦である信原先生のところに来院される「すごい患者さん」を的確に診断し、治療方針をあっという間にたてて、その結果治す、肩の神様でした。今でもふとした時に「何しとん?」「ええやん」「たかしさん 飲もーか」というお声がどこからか聞こえてきます。それも優しさを含んだお声で。時に眼光鋭く怖かったけど、私の疑問に対していつも優しく明確に答えてくださいました。先生のご指導で学会発表をし、論文を書き、Glenoid osteotomy、Modified Putti-platt(NH method)、Massive (Global) tear など多くの手術に先生が直接前立ちをしてくださり、うまく行った時に褒めて下さるお言葉と笑顔が何よりの次への励みでした。写真は第6回国際肩関節外科学会(Helsinki)でBest Oral Presentation Award(国際肩関節学会賞)を受賞し、お祝いのお言葉を先生から直接頂いた時に撮影したものです(私の宝物)。信原先生、いつも笑顔で優しく先生のご経験と考え方をたくさん教えてくださり有難うございました。先生に教えていただいた多くのことを忘れず、弟子として恥ずかしくないように、肩の痛みで困っている患者様に寄り添い、またスタッフにも先生の教えを伝えていきたいと思っております。

元 信原病院・バイオメカニクス研究所 診療部長
現 はしもと整形外科クリニック 院長 橋本 卓

 

信原病院・バイオメカニクス研究所HPより引用

http://nobuhara-hp.sakura.ne.jp/Oshirase2022_3.pdf

 

2022年05月06日