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第49回日本肩関節学会に出席してきました

10月に横浜で開催された第49回日本肩関節学会に出席してきました。学会の代議員を拝命しており、学会前日の社員総会に出席しました(しなくてはなりませんでした)。社団法人となったこと、学会をさらに大きくするために(?)、今年は19名と今までにない大人数の代議員が新たに選挙で選ばれました。総会の後、会長招宴があり、久しぶりに肩の仲間とリアルにお酒が飲めました(嬉)。翌日の学会初日に依頼された座長を務めました。肩の夜間痛のこと、腱板を修復してもインナーマッスルが回復しない、脂肪変性(浸潤)も不変など、ちょっと悲しくなる演題発表もありました。一番嬉しかったことは肩学会に初めて参加したスタッフが学んだことをすぐに当院の患者様の治療に還元してくれたことです。連れて行って良かった。

 

2022年10月12日
運動器SHOCK WAVE研究会に参加しました

9月に東京で開催された第4回運動器SHOCK WAVE研究会学術集会に参加してきました。体外衝撃波治療の整形外科に特化した研究会です。適応疾患や最適なエネルギーの量など、まだまだ議論の余地がありますが、重篤な副作用などもなく、とても期待できる治療であることを再確認できました。学術集会終了後に試験があり、合格したので、「施術者?」認定証 なるものを戴きました。患者様の痛みの軽減、組織の再生を願って今後も集束型体外衝撃波を治療に使って行きたいと思っております。

2022年10月12日
コロナワクチン接種―筋肉注射について

 本邦ではインフルエンザを含む多くのワクチン接種が筋肉注射(筋注)ではなく皮下注射(皮下注)ですが、海外のほとんどの国ではワクチン接種は筋注です。インフルエンザワクチンやB型肝炎ワクチンの発症予防や抗体産生に関して筋注の方がより効果があり、注射の痛みや副作用も皮下注よりはるかに少ないことが多くの文献で報告されています。
 それにも関わらず、本邦でワクチンの筋注が避けられてきた理由として、1973年に全国紙で報じられた「幼児大腿四頭筋短縮症(拘縮症)」の原因が大腿部前面への筋注であったことが社会問題となった時代背景があります。ワクチンではなく使用した解熱剤や抗生物質が筋の線維化の原因であったのですが、筋注それ自体が問題であるという考え方が広まり、ワクチン接種に対しても筋注に慎重になってきた歴史があります。2021年2月に日本でコロナワクチンの接種が開始され、今回の接種が4回目となります。当院でも7月26日(火)より新型コロナワクチンの4回目接種(ファイザー社:12歳以上)を開始します。新型コロナワクチンは海外での開発であり、治験も筋注で行われており、日本国内の接種であっても筋注で実施する必要があり、ワクチンを接種する我々医療者は正しい筋肉注射の手技を行う義務があります。
 看護師さんはワクチンの注射を行う部位が肩関節の一番外側で皮下に触れる肩峰という骨から3横指下(約5cm)であることを教えられてきています。しかしながら皮下注ではあまり問題とならなかったこの部位が筋注ではとても危険な部位であることを整形外科医であり、特に肩関節を専門とする私にとって手術を行うたびに痛感させられてきました。
 コロナワクチンの筋注は通常、三角筋という肩の筋肉内に打つのですが、深層には腋窩神経と肩関節を構成する三角筋下(肩峰下)滑液包という大事な組織があります。三角筋を支配する腋窩神経は肩関節や上腕骨近位端骨折の手術で最初に気をつける部位です。肩関節が内旋すると腋窩神経の中枢部が注射の部位になり、橈骨神経も腋窩神経に近くなり、さらに危険です。ワクチン注射後に肩が上がりにくい患者様を見ますが、単なる注射後の痛みであれば徐々に軽快しますが、腋窩神経の末梢部位での損傷であれば前方の三角筋麻痺のみが起こり、完全麻痺とはならないので見逃されることもあります。また肩の外旋が強すぎると結節間溝という肩関節内に繋がる組織に直接刺す危険性があり、上肢の肢位に細心の注意を払わなければなりません。
 肩峰下近位での筋注、あるいは肩関節が外転していると針が上肢外側に対して上方を向いて刺入することになり三角筋下滑液包内へのワクチンの誤注入のリスクが高くなります。インフルエンザワクチンなどの注射後に強い肩峰下滑液包炎が起こることが多く報告されてきており、2010年にはすでにSIRVA(Shoulder Injury Related to Vaccine Administration;ワクチン接種に関連した肩の障害) との名称が提唱され、肩関節外科医の間では周知の疾患となっています。手術による肩峰下滑液包の郭清が必要になることもあります。大学の後輩で、産業医大若松病院整形外科の内田教授が2012年に近医で子宮頸がんワクチンである Cervarix を三角筋部に注射後、数時間で重篤な肩峰下滑液包炎が発症し紹介来院、手術に至った症例を報告しています。裁判記録によると発症原因は不適切な部位への注射であったようです。橈骨神経は上腕骨骨幹部骨折のプレート固定などの手術で最大の注意を払う神経です。注射による橈骨神経障害は腋窩神経とは比較にならないほど重篤かつ麻痺などの後遺症が残ることがあり、最も気をつけなければならない神経です。
 外来診療で使用している整形外科に特化した超音波エコーを用いると橈骨神経の走行を明瞭に確認することができ、また後上腕回旋動脈に沿って走行する腋窩神経の部位も容易に確認できます。正しく安全なワクチン接種を行っていきたいと思っております。

1)馬嶋健一郎ほか インフルエンザワクチンにおける皮下注射・筋肉注射の差異―発症率・接種時疼痛・副反応の前向きコホート観察研究― 環境感染誌 2021; 36: 44-52.
2)Uchida S, et al. Subacromial bursitis following human papilloma virus vaccine misinjection. Vaccine 2012; 31:27-30.
3) Bass JR, et al. Shoulder injury related to vaccine administration (SIRVA) after COVID-19 vaccination. Vaccine 2022 Jun 8


2022年07月20日
論文掲載

昨年10月に名古屋で開催された第48回日本肩関節学会で発表した内容のProceedingが雑誌「肩関節」に掲載許可となりました。これで86本目の主著論文となりますが、まだまだ恩師信原先生の域には到底及んでおりません。先生は開業後も立ち止まることなく、国内外の講演は言うまでもなく、精力的に有名な「肩の教科書」に加え、肩に関する数えきれない論文や明智光秀の書籍など多くの業績を残されました。もちろん患者様の診療が一番優先することですが、今後も日々の診療で得られる新しい知見などがあれば学会発表や論文を書いていきたいと思います。

  

2022年07月10日
肩の治療実績(2021)

読売新聞6月15日の紙面に全国の主な医療機関(日本肩関節学会会員の医師が在籍)の肩の治療実績(2021)が掲載されました。当クリニックも載っております。これも肩の痛みに困って来院していただいた多くの患者様のおかげです。有難うございました。これからも正確な診断と的確な治療を行なってまいりたいと思っております。

2022年07月06日
開院1周年

今月の6月17日で開院後1年となりました。本当にあっという間で勤務医から開業医になり、院長兼事務長?の仕事も大変でしたが、勤務医では知りようがなかった保険医療に関する多くのことを知り、また一人一人の患者様の症状から改めて多くのことを学べ、とても充実した1年でした。共に頑張ってくれたスタッフ皆んなに感謝、有難う。もちろん一番は当院に御来院いただいた患者様のおかげで迎えることができた1年です。今後もロードバイクで走り回った大好きな糸島で痛みを抱えておられる患者様に寄り添い、私の持てる力と今までの経験、そして集束型体外衝撃波など最新の医療機器を駆使して地域医療を全うしていきたいと思っております。写真はお世話になった大事な方からいただいたケーキとお花です。私が一番大好きなイチゴケーキでした(スタッフ全員で食べました)。PS:日差しが強いリハ室のロールスクリーンを私が好きなネイビーブルーにしました(嬉)。

2022年06月29日
恩師信原先生と

医師として私には大切な5人の恩師(師匠)がいます。鈴木先生、笹栗先生、松元先生、Snyder先生、そして信原先生です。信原先生のご指導のもと、書かせていただいた主著論文は数えたら50を超えていました。10年以上にわたり、信原病院で肩関節外科医としての私を作っていただき本当に有難うございました。先生の外来でBeschreiberをしているときが一番勉強になりました。大学を含め、どこに行っても匙を投げられ、最後の砦である信原先生のところに来院される「すごい患者さん」を的確に診断し、治療方針をあっという間にたてて、その結果治す、肩の神様でした。今でもふとした時に「何しとん?」「ええやん」「たかしさん 飲もーか」というお声がどこからか聞こえてきます。それも優しさを含んだお声で。時に眼光鋭く怖かったけど、私の疑問に対していつも優しく明確に答えてくださいました。先生のご指導で学会発表をし、論文を書き、Glenoid osteotomy、Modified Putti-platt(NH method)、Massive (Global) tear など多くの手術に先生が直接前立ちをしてくださり、うまく行った時に褒めて下さるお言葉と笑顔が何よりの次への励みでした。写真は第6回国際肩関節外科学会(Helsinki)でBest Oral Presentation Award(国際肩関節学会賞)を受賞し、お祝いのお言葉を先生から直接頂いた時に撮影したものです(私の宝物)。信原先生、いつも笑顔で優しく先生のご経験と考え方をたくさん教えてくださり有難うございました。先生に教えていただいた多くのことを忘れず、弟子として恥ずかしくないように、肩の痛みで困っている患者様に寄り添い、またスタッフにも先生の教えを伝えていきたいと思っております。

元 信原病院・バイオメカニクス研究所 診療部長
現 はしもと整形外科クリニック 院長 橋本 卓

 

信原病院・バイオメカニクス研究所HPより引用

http://nobuhara-hp.sakura.ne.jp/Oshirase2022_3.pdf

 

2022年05月06日
腰痛に対する牽引療法は効果があるか?

院長の橋本です。現在ではEBM(Evidence Based Medicine;根拠 エビデンスに基づく医療)とそれをまとめた診療ガイドラインを参照し、「より良い医療」を考えることが医師としての治療原則となっています。その概念は私の専門である肩関節外科のパイオニアであるEA Codman先生が提唱し、先生の著書「The Shoulder」(何と1914年出版)に記載している「End Result Idea」が始まりのようです(難解な英文の復刻版を持っていますが、手書きの病理組織など挿絵がとても素晴らしいです。日本における肩関節外科のパイオニアであり、尊敬してやまない師匠の信原克哉先生は原著を持っておられました)。

私が整形外科医になったころ、腰を牽引している患者様を外来でも入院でも見て、本当に効果があるのか(ない!)いつも疑問に思っていました。2019年に改訂された「腰痛診療ガイドライン」の「腰痛の治療として物理・装具療法は有用か」のなかで「牽引療法」は推奨度2(行うことを弱く推奨する)、エビデンスの強さC(効果の推定値に対する確信は限定的である)です。ガイドラインが示す通り牽引で腰痛が治るという考えに私は全く同意できず、当然当院には牽引装置は設置していません。

https://minds.jcqhc.or.jp/s/guidance_nakayama_bc_2018
https://www.ajha.or.jp/voice/arikata/2011/07.html
https://en.wikipedia.org/wiki/Ernest_Amory_Codman

https://www.joa.or.jp/member/committee/guideline/files/guideline/lumbago_2019/lumbago_2019_b1.pdf#page=39

 

 

2022年03月30日
骨粗鬆症の診断について(DEXA法による骨密度測定)

院長の橋本です。本日(3月27日)ジョギング中に近くの神社、公園で満開の桜を見て心が躍り、写真を撮りまくりました。3月も下旬となり、はしもと整形外科クリニックも開院後早くも9ヶ月が過ぎました。当院を選択してご来院いただいた患者様には感謝の言葉以外ありません。皆様が当院に来て良かったと思えるように整形外科医師として最善を尽くしたいと思っております。

さて本日は骨粗鬆症の診断のためにDEXA法による骨密度測定がとても重要であることについてお話しします。DEXA法とは微量なX線(レントゲンより被曝が圧倒的に少ない)をあてて、腰椎(腰の骨)と大腿骨頚部(足の付け根)の骨密度を正確に測れる装置です。当院は最新型の骨密度測定装置を設置しています。測定時間はわずか10分ほどです背中が丸くなって仰向けに寝ることが辛い方も出来るだけ痛みが出ない姿勢をとっていただけるように工夫しています。

骨粗鬆症は女性ホルモンの低下が大きな原因となるので、閉経後の女性に多く、骨粗鬆症になると脊椎の圧迫骨折(背中が曲がる)や大腿骨頚部骨折が発生する頻度が高くなり、要介護や寝たきりになるなど健康寿命を短くする大きな原因となっています。そのため正確な骨粗鬆症の診断には腰椎と大腿骨頚部の骨密度を測定することが重要です。

整形外科専門クリニック以外では、DEXA法による骨密度測定装置を設置していないことが多く、健診の付加項目として簡略的に手の骨を撮影して骨密度を測る方法(DIP法など)などを代用しているようです。最も測定が必要な腰椎や大腿骨頚部の骨密度を測定していないことと、DEXA法では骨粗鬆症と診断できても皮質骨である手の骨では正常の骨密度であることもあります。逆に手の骨密度を測定して骨粗鬆症と診断された場合は、かなり骨粗鬆症が進んでいることが考えられ、精密検査として早急にDEXA法を行う必要があります。

健康寿命を伸ばすために、また骨折などを起こさないためにも女性の場合、閉経後あるいは60歳をすぎたら一度DEXA法による骨密度測定を行いましょう。また手や腕、足の付け根の骨折などの既往のある女性の方は骨粗鬆症の可能性が高く、正確な骨密度測定をおすすめします。測定結果と血液検査や治療が必要かなどについては院長の私が丁寧にわかりやすくご説明します。

骨粗鬆症と診断された場合、治療の有無にかかわらず年齢と共に骨密度が低下していないかを定期的にチェックする必要があります。また当院で行っている運動器リハビリで特に筋力を維持することも骨密度が低下しないためにとても大切なことです。DEXAで骨粗鬆症の境界領域判定でしたが、運動器リハビリ通院で4ヶ月後に骨密度が上昇した方もおられます。

DEXA法の費用については健康保険が適用されます。

  • 1割負担の方:450円
  • 2割負担の方:900円
  • 3割負担のかた:1350円

 

 

2022年03月28日
新年あけましておめでとうございます

2021年6月17日に開院して以来あっという間に年が明けました。ご来院いただきました患者様には感謝申し上げます。本年も当院の理念である患者様に寄り添い、よくお話しを聞き、適切な治療で痛みを改善する手助けを続けてまいりたいと思っております。今後とも はしもと整形外科クリニック を何卒よろしくお願い申し上げます。

2022年01月09日